「リスティング広告の解説記事のとおりに運用しているのに、クリックだけされて問い合わせが来ない」
BtoB企業のリスティング広告では、こうした行き詰まりの相談が後を絶ちません。
広告予算だけが消化されていく管理画面を前に、上司への報告に頭を悩ませている担当者の方も多いのではないでしょうか。原因はリスティング広告そのものではなく、BtoC向けの広告運用と同じ前提で設計していることにあります。
このまま同じ前提で運用を続けると、広告費が積み上がるだけでなく「Web広告は効果がない」という誤った結論が社内に定着し、有望な獲得チャネルを自ら手放すことになりかねません。
2025年、検索連動型広告費は1兆2,814億円と前年比7.4%増で成長を続けており、設計を直せば今も有力なリード(見込み顧客)獲得手段です。この記事では、BtoBならではの特徴と注意点を押さえたうえで、運用手順5ステップと、獲得した問い合わせを商談につなげる評価・営業連携の方法まで整理します。
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Contents
BtoBリスティング広告の特徴

BtoBリスティング広告の特徴は、検索ボリュームが小さくクリック単価が高い一方で、1件あたりの受注額が大きく、検討期間が長いことです。この前提の違いを押さえずに運用すると「クリックはあるのに成果がない」状態に陥ります。
リスティング広告(検索結果に連動して表示されるクリック課金型の広告)の仕組み自体は、法人向けビジネス(BtoB)でも消費者向けビジネス(BtoC)でも同じです。違うのは前提条件のほうです。
BtoCとの4つの違い
BtoBとBtoCの違いは、次の4点に集約できます。まず表で全体を確認してください。
| 観点 | BtoB | BtoC |
|---|---|---|
| 検索ボリューム | 小さい(月間数十〜数百も普通) | 大きい(月間数千〜数十万) |
| クリック単価 | 高くなりやすい | 相対的に低い |
| 検討期間 | 長い(数か月〜年単位) | 短い(即日〜数週間) |
| CVポイント | 問い合わせ・資料DL・ウェビナーなど多段 | 購入・申込に集約 |
それぞれの背景を見ていきます。
違いの1つ目は検索ボリュームです。業務で使う専門キーワードは検索する人が限られ、月間数十〜数百回の規模も珍しくありません。母数は少ない代わりに、検索している人は課題を抱えた仕事中の担当者であり、1件あたりの価値が高いのがBtoBの特性です。
2つ目はクリック単価(CPC。1クリックあたりの費用)です。Google検索広告の平均CPCは約755円で前年比約13%上昇しています。BtoBでは商談につながる少数のキーワードに競合の入札が集中するため、平均よりさらに高くなりやすい構造です。
3つ目は検討期間です。企業の購買では、営業面談の前に85%の担当者が候補を絞り込んでいます。つまり、検索や情報収集の段階で比較検討の大半が進んでおり、高額な取引ほど検討プロセスは複雑化・長期化します。
クリックから受注までの距離が、BtoCとは桁違いに長いのです。
4つ目はCV(コンバージョン。問い合わせや資料請求などの成果地点)の設計です。BtoBでは、検索しているのが決裁者本人ではないケースや、社内検討の材料集めとして調べているケースが多く、いきなり問い合わせには至りません。
そのため、資料ダウンロードやウェビナーなど、検討段階に応じた複数の受け皿が前提になります。
この4つの違いは、後述する運用手順と評価設計のすべてに関わってきます。
検索ボリュームが少なくても投資が成り立つ理由
「月に数百回しか検索されないキーワードに、広告費をかける意味があるのか」と疑問に感じるかもしれません。結論から言うと、BtoBでは成り立つケースが多いです。
理由は、コスト構造と受注単価の対比にあります。検索ボリュームが少なくクリック単価も高いBtoBでは、CV1件あたりの広告費(CPA)は数万円規模になりがちです。
それでもBtoB商材は1件の受注額が数十万円〜数千万円になるため、受注単価やLTV(顧客生涯価値。取引期間全体の売上)との対比で十分回収できます。クリックの「量」ではなく、受注から逆算した「採算」で判断するのがBtoBの考え方です。
もうひとつの理由が、検索結果に出ること自体の価値です。当社がBtoBサービスの購買経験者180名を対象に行った調査では、比較検討する企業数は平均2.9社(中央値3社)で、「3社」に絞って比較する人が最も多い結果でした。
つまり、検討初期の検索で見つけてもらえるかどうかが、比較候補の3社以内に残れるかの分岐点であり、広告での露出はその入場券になります。
ただし、そもそも検索行動が存在しない商材(超ニッチな部材や、課題自体が認知されていない新概念など)では、この前提が崩れます。出稿前に、自社の商材が「検索されている」かをキーワードプランナー等で確認してください。
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AI検索時代における広告枠の価値
検索のAI化を理由に、リスティング広告への投資をためらう必要は現時点ではありません。自然検索のクリックが減るなかで、確実に露出できる広告枠の位置づけは見直されつつあります。
GoogleのAI Overview(検索結果の上部にAIが要約を表示する機能)が表示された検索では、自然検索1位のクリック率が日本で約38%低下したという調査があります。
直近の報道では、低下幅は62.7%まで拡大しています。SEOで1位を取っても、以前ほどクリックが届かなくなっているのです。
参考:【Ahrefs 調査】AI による概要の CTR 低下が半年で加速、日本は検索 1 位でも 62.7% 減に
一方、広告枠は検索結果の最上部に表示され続けます。自然検索のゼロクリック化が進むほど、「確実に露出できる場所」としての広告の価値は相対的に高まると考えられます。SEO側でクリック率をどう守るかは、別記事「SEOでクリック率を上げる方法」で詳しく解説しています
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SEOのクリック率(CTR)を上げる6つの方法|低くなる原因も解説
BtoBだからこそリスティング広告が効く3つの理由

BtoBで成果につながりやすい理由は、以下の3つです。
- ニッチな専門語でも上位に出せる
- 初日から流入をつくれる
- 検索語句が資産になる
リスティング広告には、顕在層にアプローチできる、少額から始められる、効果を測定しやすいといった一般的なメリットもあります。下記の記事で網羅的に解説しているため、この記事では「BtoBだからこそ」の理由に絞って取り上げます。
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リスティング広告のメリット・デメリット16選
SEOで勝ちにくいニッチな専門キーワードでも上位に出せる
BtoBの専門キーワードは、SEOでは意外に難しい戦場です。検索数が少ないわりに、業界の老舗サイトや大手比較メディアが上位を固めていることが多く、新規参入のオウンドメディアが記事で勝つには年単位の時間がかかります。
広告なら、この構図を飛び越えられます。出稿すれば掲載初日から検索結果の上位に露出でき、ドメインの強さも記事の蓄積も関係ありません。「検索されているのに自社が出てこない」という機会損失を最短で止められるのは、ニッチな専門商材を扱うBtoB企業ならではの使いどころです。
出稿初日から見込み顧客の流入をつくれる
SEOやコンテンツ施策は、成果が出るまで数か月から年単位の投資が前提です。リスティング広告は、その立ち上がりの時間を買えます。
出稿した当日から、課題が明確な見込み顧客の流入をつくれるため、新サービスの立ち上げ期や、リード獲得を今期中に増やしたい場面で先行手段になります。広告で当面のリードを確保しながら、並行してSEOを育てるという時間差の使い分けができると、リード獲得がリード獲得がSEO頼み一辺倒の状態から抜け出せます。
見込み顧客の検索語句がSEOと営業の材料になる
見落とされがちですが、BtoBでは広告の副産物に大きな価値があります。検索語句レポート(実際に広告が表示・クリックされた検索語の一覧)です。
このレポートには「顧客が自社の商材をどんな言葉で探しているか」の実データが並びます。想定していなかった課題語や業界特有の言い回し、競合名との掛け合わせも見つかります。
ここで反応が良かった語句は、SEOのキーワード選定やLP(ランディングページ。広告の受け皿ページ)の見出し、さらには営業トークの言い回しの改善にそのまま転用できます。広告費がリード獲得費であると同時に、市場リサーチ費を兼ねるわけです。社内へ広告投資を説明する際の、隠れた説得材料にもなります。
BtoBリスティング広告ならではの4つの注意点

BtoBのリスティング広告における主な注意点は、以下の4つです。
- 高いクリック単価
- 検索者と決裁者のズレ
- 対象外CVの混入
- 機械学習の偏り
運用の手間や費用といった一般的な注意点ではなく、BtoB特有の構造から生じる落とし穴とも言えます。どれも「知らずに始めて数か月後に気づく」型のつまずきですが、事前に設計へ織り込めば軽減できます。
クリック単価が高くCPAが数万円規模になりやすい
前述のとおり、BtoBでは限られた商業キーワードに入札が集中するためクリック単価が高く、CVR(コンバージョン率。クリックからCVに至る割合)が数%とすると、CPAは数万円〜十数万円になることも珍しくありません。
ここで注意したいのは、BtoCの感覚でこの数字を見ないことです。CPA3万円は、単価数千円の商材なら大赤字ですが、受注単価500万円のBtoB商材なら十分に回収可能な水準です。
「高すぎるから停止」と判断する前に、受注単価・LTVとの対比、つまり冒頭で述べた「投資が成り立つ理由」の物差しで評価してください。
検索する人と決裁する人が違う
BtoBの購買は組織で行われます。検索して問い合わせるのは現場の担当者、最終的に決めるのは上司や役員。この「検索者と決裁者のズレ」が、CVしてもすぐ受注にならない構造の正体です。実際、取引の価格帯が上がるほど購買に関与する人数は3倍以上に拡大するという調査結果もあり、高額なBtoB商材ほど「検索した本人」だけでは決まりません。
打ち手は、担当者を「社内の推薦者」に変える設計です。比較表、導入事例、費用資料など、担当者が上司にそのまま見せられる材料をLPやCV後の導線に用意しておくと、社内説明のハードルが下がり、商談化しやすくなります。
広告は担当者までしか届きません。その先の決裁者へは担当者の手を借りて届ける、という二段構えを最初から想定しておきましょう。
同業他社や代理店の営業がCVに混ざる
BtoBのCVには、顧客ではない問い合わせが一定割合混ざります。代表的なのは、同業他社の情報収集と、広告代理店や営業会社からの売り込みです。CV数だけ見ると順調なのに、営業に回すと「商談にならない」と言われる場合は、まずこの混入を疑ってください。
対策は3つあります。
- 除外キーワードで、明らかに対象外の検索を弾く
- フォームで会社名を必須にし、営業目的の問い合わせはお断りする旨を明記する
- 後述する商談化率で評価する
CV数でなく商談化率を見ていれば、こうした「見せかけのCV」は数字として可視化され、早期に手を打てます。
機械学習が「安いリード」に最適化してしまう
現在の広告運用は自動入札(成果が出やすい配信をAIが自動調整する仕組み)が主流ですが、BtoBには相性の問題があります。広告媒体側には「どのCVが受注につながったか」のデータが返らないため、機械学習は「CVの取りやすさ」を主な手がかりに最適化を進めます。
その結果、獲得しやすいが受注につながらない「安いリード」に配信が寄っていくリスクが、広告運用の実務では繰り返し指摘されています。
BtoBはCV数自体が少なく、学習が不安定になりやすい点も拍車をかけます。対策は2つあります。1つは、学習させるCVを商談価値の高いもの(問い合わせ・見積もり依頼)に絞ること。
もう1つは、可能であればオフラインコンバージョン(商談化や受注など、広告の外で起きた成果データを広告媒体に取り込む仕組み)を導入し、機械学習に「受注につながるCV」を教えることです。
詳しくは後述のマイクロコンバージョンの項で扱います。
BtoBリスティング広告で成果を出す運用手順5ステップ

ここからは実際の運用設計に入ります。手順は次の5ステップで、一貫しているのは「限られた予算を、受注に近い顕在層へ集中させる」という方針です。
- 購買意欲の高いキーワードに予算を集中する
- 除外キーワードでターゲット外のクリックを防ぐ
- 配信の時間帯・地域・デバイスを絞り込む
- 法人向けであることが伝わる広告文を作る
- 広告文とランディングページの訴求を一致させる
なお、この記事では「なぜBtoBではそう設計するのか」という考え方を中心に解説します。Google広告の管理画面での具体的な設定手順は、別記事で画面つきで解説しています。
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リスティング広告のやり方|費用やコツについても
購買意欲の高いキーワードに予算を集中する
ステップ1では、出稿するキーワードを選定します。BtoBで優先すべきは、「〇〇 法人」「〇〇 比較」「〇〇 料金」のように、課題と導入意向が言葉に表れているキーワードです。検索数は少なくても、この層は受注までの距離が最も短いためです。
逆に、「〇〇とは」のような情報収集段階のキーワードは原則除外します。クリックは集まりますが、この段階の読者はまだ比較の入口にすら立っておらず、限られた予算では回収が困難です。潜在層への配信は、顕在層で採算が取れて予算に余裕が出てからの選択肢と考えてください。
また、単価を抑える工夫として、2語以上の掛け合わせ(ロングテールキーワード)を拾うのも定石です。「勤怠管理システム 建設業 比較」のような具体的な語句は、単価が下がるうえに検索者の課題も明確です。
除外キーワードでターゲット外のクリックを防ぐ
ステップ2は、出ないキーワードを決める作業です。BtoBでは「誰に出すか」と同じくらい「誰に出さないか」が予算効率を左右します。除外キーワード(指定した語を含む検索に広告を出さない設定)を、カテゴリで整理して登録してください。
| 分類 | 例 | 狙い |
|---|---|---|
| 個人・消費者 | 個人、自分で、家庭用 | BtoC需要の排除 |
| 求職 | 求人、転職、年収 | 求職者のクリック防止 |
| 情報収集 | とは、意味、やり方 | 検討前段階の除外 |
| 無料志向 | 無料、フリー、テンプレート | 予算のない層の除外 |
表の分類はあくまで出発点です。配信開始後は検索語句レポートを毎週確認し、実際に出てきたターゲット外の語句を追加していきます。除外リストは「最初に作って終わり」ではなく、運用の中で育てる資産です。
配信の時間帯・地域・デバイスを絞り込む
ステップ3は配信の絞り込みです。BtoBの検索は業務時間中に発生するため、平日のビジネスタイムに予算を集中し、土日・深夜は停止するのが定石です。クリック単価が高いBtoBでは、この設定だけで無駄な配信を削れます。
デバイスはPCの比率を高めます。業務の検索・比較はPCが主戦場だからです。ただし、決裁者が移動中にスマホで調べるといった例外もあるため、いきなりスマホを全停止にするのではなく、データを見ながら入札比率で調整する運用が安全です。
地域も忘れずに絞ってください。営業やサポートが対応できるエリアに限定しないと、対応不能な地域からの問い合わせに広告費を払うことになります。
法人向けであることが伝わる広告文を作る
ステップ4では広告文を作ります。BtoBの広告文でまず徹底したいのは、「法人向け」「企業向け」の明示です。
例えば、広告見出しは次のように変わります。
- NG例:勤怠管理システムならA社|かんたん打刻
- OK例:【法人向け】勤怠管理システム|建設業300社の導入実績
NG例は個人利用者もクリックしてしまう書き方です。OK例のように対象と実績を見出しで示すことで、対象外のクリックを防ぎながら、法人の担当者には具体性で訴求できます。
これはクリック率を上げる工夫である以上に、消費者の誤クリックを防ぐ守りの工夫です。クリック単価が高いBtoBでは、1回の誤クリックの損失も無視できません。
そのうえで、導入社数や継続率など、実績の数字で具体性を出します。ただし「No.1」「最安」のような最上級表現には、景品表示法上の合理的な根拠が必要です。根拠資料なしに使うのは避けてください。
もうひとつ、キーワードと広告文の一致度は品質スコア(Googleが広告の品質を評価する指標。高いほど掲載順位が上がり単価が下がる)に影響します。広告グループごとに、狙うキーワードを広告文の見出しに含める基本を守るだけで、単価の抑制につながります。
広告文とランディングページの訴求を一致させる
ステップ5はLPです。広告文で「比較資料を配布」とうたいながら、飛び先が汎用のトップページでは、ユーザーは数秒で離脱します。広告文の約束とLPの内容を一致させることが、CVR改善の出発点です。
BtoBのLPでは、信頼の担保も欠かせません。導入事例、取引社数、会社概要を目に入る位置に置き、「この会社に問い合わせて大丈夫か」という不安を先に解消します。
フォームは項目を必要最小限に絞ってください。項目が1つ増えるごとに離脱数は増えます。氏名・会社名・メールアドレスを軸に、それ以外は商談時に聞く前提で設計するのが基本です。
CVを商談につなげる5つの方法

ここからがBtoBリスティング広告の本丸です。配信設定を整えるだけなら、どの会社でもやっています。差がつくのはCVの後、つまり獲得したリードを商談・受注につなげる設計です。
ここでは、5つの方法にしぼって解説します。
- CVポイントは検討フェーズに合わせて複数用意する
- マイクロコンバージョンと自動入札の正しい付き合い方
- 商談につながらない原因は2系統で切り分ける
- 評価指標をCPAから商談化率・受注に切り替える
- 営業部門へのリード引き渡しと連携の仕組みを作る
なお、クリック率やCVRそのものの技術的な改善手法は、別記事にケース別でまとめています。
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【事例あり】リスティング広告の改善ポイントとやり方を3ステップで解説
CVポイントは検討フェーズに合わせて複数用意する
問い合わせフォームだけをCVにすると、「今すぐ相談したい」という少数の層しか捕まえられません。BtoBでは検討期間が長いため、今すぐ客には問い合わせ・見積もり依頼、まだ比較段階のそのうち客には資料ダウンロードやウェビナーという2階建てでCVを設計します。
ただし、ハードルの低いCVを増やすほどリードの質は下がり、商談化率も下がります。資料DLを増やして母数を稼ぐか、問い合わせに絞って質を取るか。この正解は商材や営業体制によって変わるため、質と量のバランス方針を最初に営業部門と合意しておくことが、後の行き違いを防ぎます。
マイクロコンバージョンと自動入札の正しい付き合い方
マイクロコンバージョン(MCV。最終CVの手前に置く中間成果点。資料DLや料金ページ閲覧など)は、CV数が少ないBtoBで進捗を把握する指標として有効です。ここまでは運用者の間で概ね見解が一致しています。
論点になるのは、MCVを自動入札の学習にどう使うかです。BtoBでは主要CV(問い合わせ・見積もり依頼)の件数だけでは、自動入札の学習に必要なCV数に届かないことが多く、MCVを学習に含めて母数を確保する運用が現実的な選択肢になります。
一方で、フォーム到達のような浅いMCVは、商談や受注につながる顧客に絞り込めないという弱点もあります。
主要CVだけで学習が回るならMCVは外す、母数が足りなければ商談への寄与が見込めるMCVを選んで加える、というようにケースバイケースで最適な組み合わせを判断してください。
重要なのは、後述する「何を学習させるか」を人間が設計することです。
この判断は、自動化が進むほど重みを増します。2025年5月に提供が始まったAI Max for Search(Googleの検索広告をAIが拡張配信する機能)のような自動化機能は強力です。しかし「何を学習させるか」の設計は人間の仕事のままです。
AIに任せる範囲と人間が決める範囲の線引きこそが、BtoB運用の設計項目です。
商談につながらない原因は2系統で切り分ける
「CVはあるのに商談にならない」と感じたら、原因を2系統に切り分けて診断します。
系統1はリードの質の問題です。獲得ハードルの低いCV(資料DLのみ等)に偏っている、ターゲット外の流入が混ざっている、というケース。検索語句レポートとCV内訳を見れば確認できます。対策はキーワード・除外設定・CV設計の見直し、つまり広告側の修正です。
系統2は営業連携の問題です。リードへの初回対応が遅い、フォローの担当と手順が決まっていない、営業に渡る情報が名前とメールアドレスだけ、というケース。この場合、広告をいくら改善しても商談は増えません。対策は次項以降の連携設計です。
自社がどちらのケースかで打ち手が正反対になるため、「広告が悪い」と決めつける前に、まずこの切り分けから始めてください。
評価指標をCPAから商談化率・受注に切り替える
BtoBリスティング広告の評価は、時間軸で3段階に分けます。
| 段階 | 主な指標 | 見る場所 |
|---|---|---|
| 短期(日次〜月次) | CV数・CPA | 広告の管理画面 |
| 中期(月次〜四半期) | 商談化率・商談数 | 営業管理ツール(SFA/CRM) |
| 最終(四半期〜年次) | 受注数・受注額・ROI | 営業実績と広告費の対比 |
管理画面のCPAが良くても、商談化率が低ければその配信は失敗です。逆にCPAが目標を超えていても、受注単価の高い商談を生んでいれば成功です。配信の停止・拡大は、管理画面の数値だけでなく中期・最終指標とセットで判断してください。
なお、検索ユーザーがどんな理由で広告をクリックし、どんな理由で避けるのかは、評価設計の前提知識として押さえておきたいところです。
トゥモローマーケティングでは、会社員180名を対象に、リスティング広告の認知度・クリック行動・クリックしない理由を調査したレポートを無料で配布しています。ユーザー心理の実データから自社の入口設計を見直したい方は、参考にしてください。
▼調査レポート
【2026年最新版】リスティング広告に関するユーザー意識調査レポート
営業部門へのリード引き渡しと連携の仕組みを作る
最後は営業との連携です。仕組みとして決めるべきことは2つあります。
1つ目は引き渡しのルールです。リード発生から何時間以内に誰が対応するか、営業に渡す情報に何を含めるか(流入キーワード、ダウンロードした資料名など)を決めます。流入キーワードが分かれば、営業は相手の課題を初回接触の前に推測でき、会話の精度が上がります。
2つ目は営業からのフィードバックの経路です。受注につながったリードの流入キーワード、逆に「的外れだった」リードの特徴を、月次の定例で広告側に戻し、キーワード選定と広告文に反映します。この経路が回り始めると、広告は出しっぱなしの施策から、営業と一緒に精度が上がる仕組みに変わります。
実際、当社の広告運用支援でも、数値分析と短いサイクルでの改善を重ね、BtoB向けサービスで問い合わせ数が10倍以上に増加した事例があります(当社支援実績・自社調べ)。
BtoBリスティング広告の予算と運用体制

BtoBにおけるリスティング広告の予算や運用体制を決めるにあたって、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
- クリック単価の相場を知る
- 予算は目標商談数から逆算して決める
- 自社運用と外注の判断基準を決める
- 少額予算で始める
クリック単価の相場を知る
予算の前提として単価の相場観を持っておきます。Google検索広告の平均クリック単価は約755円で、前年比約13%上昇、87%の業種で上昇しています。業種差が大きく、200円台の業界から、法律サービスのように1,000円を超える業界まで開きがあります。
ただし、この相場を「正解」として扱わないでください。単価はキーワード・業種・競合状況で大きく変わります。相場はあくまで規模感の参考に留め、自社が狙うキーワードの実勢は、Google広告のキーワードプランナーで個別に確認するのが確実です。
なお、Yahoo!広告はGoogleよりクリック単価が低い傾向があるとされますが、公開された一次統計はないため、こちらも実勢確認が前提です。
予算は目標商談数から逆算して決める
BtoBの広告予算は、相場や他社事例からではなく、自社の目標から逆算します。計算式は次のとおりです。
- 目標商談数 ÷ 商談化率 = 必要CV数
- 必要CV数 ÷ CVR = 必要クリック数
- 必要クリック数 × クリック単価 = 必要予算
例えば、月3件の商談が目標で、商談化率30%、CVR2%、クリック単価800円なら、必要CV数は10件、必要クリック数は500回、予算は月40万円という計算になります。数値は自社の実績か、なければ仮置きで構いません。運用しながら実数に置き換えていきます。
この逆算式の利点は、そのまま稟議の根拠になることです。「40万円ください」ではなく「商談3件のために40万円が必要です」と言えるかどうかで、社内の通りやすさは変わります。逆算した額が妥当かは、マーケティング予算全体の目安と照らして検算してください。
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自社運用と外注の判断基準を決める
運用体制は、自社運用(インハウス)と外注の2択です。特性を表で比較します。
| 観点 | 自社運用 | 外注 |
|---|---|---|
| 費用 | 手数料なし(人件費のみ) | 広告費の20%前後+最低手数料の場合あり |
| ノウハウ | 社内に蓄積する | 蓄積しにくい |
| スピード | 立ち上げに学習期間が必要 | 即戦力で開始できる |
| 向く企業 | 専任を置ける・長期で内製したい | 人材がいない・早く成果が欲しい |
外注手数料は広告費の20%前後が一般的で、少額予算では月5万円前後の最低手数料が設定されることもあります。判断軸は、予算規模・社内人材の有無・スピード要求の3つです。
注意したいのは、外注する場合でも丸投げにしないことです。商材理解が浅いまま運用された広告は、この記事で挙げた「BtoBならではの注意点」を素通りします。商材・顧客・営業状況を共有する定例の場を必ず設けてください。将来的な内製化を見据えるなら、こちらの記事も参考になります。
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リスティング広告を内製インハウス化する手順と成功ポイント!代理店との違いも解説
少額予算で始める
月10万〜30万円程度の少額から始める場合は、広げないことが成功条件になります。
ただし、BtoBはクリック単価が高いため、前述の逆算式で試算すると、データを貯めながら成果を判断するには最低でも月20万円程度の予算が現実的なラインです。また、月10万円前後の予算では、外注しても代理店の主要な担当者がつきにくいなど、支援の質を確保しにくい面があります。
この前提を踏まえたうえで、少額で始める場合は「広げないこと」を徹底してください。
出稿は、指名キーワード(社名・サービス名)と、最重要の課題解決キーワードに絞ります。媒体もGoogle1本から始め、成果が安定してからYahoo!の併用を検討すれば十分です。少額で幅を広げると、キーワードごとのデータが貯まらず、何が効いているのか判断できないまま予算が尽きます。
もうひとつ、出稿前にCV計測の設定を必ず整えてください。測れない状態で始めた広告は、どれだけ配信しても学びが残りません。「小さく、絞って、測れる状態で始める」ことが、少額スタートの鉄則です。
BtoBリスティング広告に関するよくある質問(FAQ)

媒体の選び方や成果が出るまでの期間など、導入判断で残りやすい疑問に短く答えます。
Q. GoogleとYahoo!はどちらに出稿すべきですか?
国内検索シェアの大きいGoogleから始めるのが基本です。Yahoo!広告はクリック単価が低い傾向があるとされるため、Googleで成果の型ができ、予算に余裕が出た段階で併用を検討してください。
Q. 成果が出るまでどれくらいかかりますか?
配信の学習とデータ蓄積のため、成果が安定するまで3〜6か月程度が一般的な目安です。BtoBではさらに商談・受注までの検討期間が加わるため、受注ベースの評価はより長期で構えてください。
短期のCPAだけで撤退を判断すると、育てかけの施策を止めてしまいます。
Q. 検索ボリュームが少なすぎて出稿できない場合は?
検索行動自体がない商材では、リスティング広告は主役になれません。ディスプレイ広告やSNS広告など潜在層に認知を作る施策と併用しつつ、中期的には指名検索(社名・サービス名での検索)を育てる方針に切り替えてください。
Q. リスティング広告とSEOはどちらを優先すべきですか?
即効性はリスティング広告、資産性はSEOです。今期のリードが必要なら広告から、半年以上の時間軸で集客基盤を作るならSEOと併用が答えになります。SEO側のクリック率改善については別記事で解説しています。
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SEOのクリック率(CTR)を上げる6つの方法|低くなる原因も解説
BtoBリスティング広告は「商談からの逆算」で成果が決まる

広告の管理画面だけを見ていても、BtoBの成果は判断できません。違いを押さえ、小さく始めて評価を回すのが近道です。
本記事でお伝えした要点を、3つに絞ります。
- BtoCとの4つの違い(検索量・クリック単価・検討期間・CVポイント)を前提に設計する
- 運用5ステップで、限られた予算を顕在層に集中させる
- CV数・CPAではなく、商談化率・受注で評価し、営業との連携まで仕組みにする
ここまで読んだ方は、「クリックは増えるのに商談が増えない」原因がどこにあるか、自社のケースで見当がつくようになっているはずです。まずは自社の現状を、運用5ステップと評価の3段階に照らして点検してみてください。
設計の見直しや運用体制づくりに不安が残る場合は、トゥモローマーケティングの無料相談をご利用いただけます。広告の配信設定だけでなく、この記事で扱った商談化までの設計と営業連携を含めて伴走するのが当社の支援の特徴です。


